ハンス・ハンターの霊に献花と流花を済ませた後は、生憎の天候のため二荒山神社の
客殿に席を移して、講演会と懇談会が開かれました。この日の講演は30数年来湯川に
通い続けてフライフィッシングを愉しみ、釣り糸を垂れることを愉しむために,湯川の
自然環境や歴史的背景、人との交流をも“命”としている梅沢盛雄さんが「湯川30年
の変遷」と題して熱い思いを語りました。
湯の湖を主な水源とし標高1400メートルの戦場ヶ原を蛇行して中禅寺湖に注ぐ湯川。
国立公園の保護区で釣りができる唯一の川であり、6月ズミの花が開花するのと前後し
て解禁になる日を、心躍らせて待つという梅沢盛雄さんは人呼んで“湯川の番人”。

静かな語り口ながら全長約12キロの湯川を知り尽くし、その自然の豊かさを次の100年
につなげたいとクリーン作業も率先しています。住まいも栃木県内に移してログハウスで
カントリーライフを実践しているそうで、詳しくは梅沢さんのホームページ
里山にて」でど〜ぞ!

目下NHK大河ドラマ「龍馬伝」でも主要な存在として登場するトーマス・グラバーが明治
35年(1902)にアメリカからブルックトラウト(カワマス)の発眼卵を取り寄せ放流。その
英国式フィッシングを中禅寺湖畔に広めたハンス・ハンターの足跡など歴史的背景から、
湯川はフライフィッシングの聖地ともされているそうです。


ピアノとソプラノ独唱でスコットランド民謡を愉しみ・・・

講演に続いてトーマス・グラバーやハンス・ハンターに縁の深いスコットランド
のメロディーをビデオで楽しみました。声楽家の横山一恵さんが都合で参加でき
なくなり、前日に自宅で録画した映像を大型モニターで鑑賞。

横山さんのピアノとソプラノ独唱でイギリスの国歌から始まり、「スコットラン
ドの釣鐘草」「ロッホ・ローモンド」「ロンドンデリーの歌」など私たちも小学
生唱歌として親しんできた10曲。エンディングは「蛍の光」でした。


かつて小平市内にあった範多農園で幼児期を過ごした一重幸さんも駆けつけて

一重幸(いちじゅう・ゆき=旧姓加藤)さんは、範多農園の管理人をしていた加藤登一さ
んの次女で、昭和14年(1939)頃一家6人で同農園へ。父親は福島県矢吹で警察官をし
ていましたが、ハンター氏が雉狩りに訪れた時に護衛をしたのが縁で、ハンター氏から
口説かれて農園の管理人を引き受けたそうです。「警察官の職を捨ててまで管理人にな
ったのは、きっと父もハンターさんに惚れ込んだのでしょう」。

ハンター氏が当時の内外の情勢から事業を整理して、自給自足的な生活を送るために多
大な資産をつぎ込んだだけに、農園は広大で那須から移築した母屋は、辺りを圧倒する
ほど壮大でした。ハンター氏は子供心にも威厳が感じられたそうです。

ハンター氏の実娘・光世さんは幸さんより二つ年下で、農園内には加藤家の兄妹4人と
光世さんしか子供がいなかったので、いつも一緒に遊び、母屋2階のゲストルームの豪
華なベッドに寝転んだり、国宝級の大名籠でも隠れん坊したり…温室では世話をしてい
る人から「トマトでなくトメイトウと呼ぶんだよ」と英語風の発音を教わったり…。と
にかく全てが異次元の世界のようで、60数年を経た今日でも忘れられないそうです。

幸さんは恐らくハンター氏に実際に会った唯一最後の人で、農園での家族の写真も持参
しており、この日の参加者は興味しんしん、和やかで密度の濃い懇談会でした。


第4回へハンター忌へ