ヤブジラミ (せり科)



野を浅く わたりし裾に 草じらみ  高浜 虚子

初夏の上水土手で、細く裂けた葉に小米のような白い花が一面に咲いて人目をひく。30p前後の背丈の茎に、微粒な花と刻みの深い葉がよく調和していると思う。

この可憐な野草の名は気の毒にもヤブシラミ。しかし、その花が散り秋を迎えると、この花の果実は名は体を表わすことが分かる。

初秋の風景にひたりながら上水の草原を散策している時、ヤブジラミの褐色で卵型の刺状の毛が密生している果実が衣服に付着すると、お手上げである。刺状の毛の先端はカギ状に曲がっており、
くっついて離れない。

その状態は一見丸く太ったシラミであり、刺毛はシラミの足のように見える。

植物が子孫を殖やすための知恵には恐れ入る。

群生するヤブジラミの花の最盛期は、糠雨に濡れる上水の野趣を引き立てている。

花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月
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