ヤブコウジ (やぶこうじ科)



初雪や実は降のこす薮柑子   松岡青蘿

広葉樹林が秋色に染まり始めた上水堤を歩いていると、寺橋付近の柵に沿って生息しているヤブコウジ(藪柑子)が葉陰に1〜2個の真紅の艶やかな実をつり下げていた。

不思議なことに境界柵の足元に整列したように生息しており、背丈は10〜15センチくらい。まだ幼い苗木のように見えたが一人前に実をつけ、熟しているのに驚いた。

その赤い実が正月の縁起花として用いられるセンリョウやマンリョウと同じヤブコウジ科の常緑低木だが、あまりにも背丈が低いせいか、花や実が青い時期には見落としがちだ。

図鑑によると北海道〜九州、東アジアの広葉樹林帯に広く分布するが、ヤブコウジは椎や樫など高木と競って幹や枝を伸ばさず、その下で生き延びるため戦略として樹高は20センチ止りで、土中に地下茎を発達させて殖えていくそうだ。

地上茎を出す場所を変えることができ、良好な生育地を求めて移動し生育するため、上水堤の柵の足元に沿って生息しているのだった。

別名は十両で、センリョウ(千両)やマンリョウ(万両)に比べて価値が低いとされるが、生き延びる知恵はしたたかである。

落語「寿限無」の中の“やぶらこうじのぶらこうじ…”は本種のこととされている。     

花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月

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