チガヤ (いね科)



三日月のほのかに白し茅花の穂    正岡子規 
乞へば茅花すべて与へて去にし子よ  中村汀女 
江戸・承応年間に玉川上水の開削によって新田集落が誕生する以前の武蔵野を象徴するような茅の花穂を見かけたのは4月上旬。葉に先立って赤みをおびた花穂を出し、やがて白い絹毛でおおわれた尾状の穂に。穂の長さは10〜20センチ。

この絹毛で覆われたしなやかな穂から赤紫色の雄蕊の葯を覗かせる時期が、いわゆる生殖期なのだろう。絹毛は次第に褐色に変色すると同時にボサボサの庭箒みたいになってしまう。

まだ赤みをおびた花穂は茅穂(つばな)と呼ばれ、子供の頃にガムのように噛んだ記憶も懐かしい。サトウキビと近縁で根に強い甘味を持ち、花穂も甘味があり江戸時代にツバナの名で売られていた記録もあるそうだ。

イネ科の多年草で日本全土に分布し、高さ50〜80センチ、地下の匍匐茎で繁殖して群生するので白い穂波は畑にとっては迷惑な存在でもあった。

千(ち)なるカヤから群せいするカヤ=茅(ちがや)、あるいは秋に葉が血のように赤く紅葉するカヤとの説も。

神社の6月の晦日の夏越の祓で、茅草で作られた大きな茅の輪をくぐりぬける神事がある。左回り、右回りで8の字を描くように3回くぐると疫病や罪が祓われると古来から伝わる。大晦日の年越の祓でも茅の輪をくぐりをする神社も。
花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月

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