シュンラン (らん科)


春蘭も (くぬぎ)の幹も 雨過ぎぬ 水原 秋桜子

上水土手の落葉樹の芽が動き始める項、春蘭は落葉を床にしながら、春に先がけ花の便りを伝えてくれる。

早春のシンボルとも言うべきこの常緑性の多年草は、雑木林に自生し、ラン科の仲間では最もポピュラーなものとして多くの人から愛されている。

が、次々と雑木林が滅びていく武蔵野にあって、玉川上水土手では未だ多数の株のシュンランの姿を見ることが出来るのは本当に喜ばしい。

2月の初め項根元の落葉を少し払って、暗緑色で固めの土を静かに押し上げて見ると、花茎になる淡緑色の芽が細筆の穂先のように見られる。

芽吹きかけた枝越しに春の陽光を受け、時間と共にやがてそれはふっくらと大きくふくらむ。

3月中頃から幾重かの紫色を帯びた莢状の膜質に包まれた花茎の先端に、淡黄緑色の唇弁型の清らかな花が開く。

上水の上手を吹く風は、シュンランの微かな香りを乗せて春を告げる。春蘭と呼ぶに相応しい。

花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月
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