ススキ (いね科)



山は暮れて 野は黄昏の薄さかな  蕪村
秋の七草の1つで、中秋の名月に供える花の中で、ススキ(芒)はその筆頭の位置を占める。

今、玉川上水ベリで一面ススキの野原を吹き渡る風の音、銀色のうねる穂波など考えることは論外であるが、初秋の頃花茎から赤味を帯びたススキの穂が伸び始め、開花し、そして成熟した花穂は尾花と呼ばれるキツネの尾を連想させる。

秋が深まるにつれ、ふっくらとした姿となっていく、ススキ独特の野趣が上水べりから消え去ってはいないのはせめてもの慰めであろう。

古き武蔵野は「むさしのは月の入るべき峰もなし 尾花が末にかかる白雲」(大納言道方)と詠まれているように、萱薄に覆われていたのが原風景である。

当時は夕日に映えたススキが穂波を打たせていたであろうが、今は想像するのみではある。

花穂の伸び始めた頃のやわらかな手ざわり、手に取って見る開花した一つ一つの花弁の神秘な美しさは、この野草の雄大な姿の中にかくれている繊細な造形である。

花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月

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