オキナグサ (きんぽうげ科)


土の香の なにかたのしき おきなぐさ
飯田 蛇笏

玉川上水堤では前年に見かけたからと言って、その場所に同じ野草が翌年も姿を現すとは限らない。期待して待ち受けてもいても空振りだったことも多い。ことに稀少種は。

堤沿いの一角のオキナグサはラッキーなことに昨年見た場所で、今年も開花していた。

草丈は15〜20センチ、釣鐘型の花は下向きに咲き始めるので、その外側の銀灰色の花も茎葉も白い産毛に覆われて、下草の萌え出す地の色に溶け込み、オキナグサの存在に気付くまでに時間がかかった。

膝を折って花弁に見える6〜8枚の萼の内側を覗くと、黒褐色のビロードの夜会服のよう。オレンジ色の葯が鮮やかで、切れ込みの多い葉も装飾的である。

かつてはあちこちに自生していた山野草だが、自然環境の悪化により激減して、レッドデータブックにも絶滅危惧種として掲載されている。

オキナグサの名前は花の後にできる果実の長く白い毛を翁の白髪に見立てたものだが、中国ではお婆さんの花と呼ばれ、別名は迎春花(インチュンホワ)。全草に白く長い毛が密生しているせいか、動物的でもある。

花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月

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