オカボ (いね科)

玉川上水の分水である鈴木用水と回田用水付近を久しぶりに歩いてみたら、回田町の一角で陸稲(おかぼ・りくとう)が黄金色の穂を垂らしていた。稲穂の一粒一粒がはち切れんばかりに。

深々と俯き波打っている稲穂を見たら、数年前に花をつけている陸稲を撮影したことを思い出した。8月半ばだった。葉身の間から覗かせた瑞々しい稲穂に白いピラピラが下がり、目立たないだけに強い印象を受けた。稲の花は数時間の儚い命とか。

水田耕作のできない武蔵野新田一帯の畑で栽培されてきた陸稲は野稲とも呼ばれる。「陸稲の飯は粘り気がないが、古い土地のもんには懐かしい。ことに陸稲米の餅を入れた雑煮が食べたくて栽培を続けている」とか「新嘗祭や神社の供え物に稲藁が欠かせない」とも。

陸稲は水稲に比べて草型が大きく、葉身が長大で根系が発達しており粒も大きめだそうだ。水稲は苗代で育てた苗を田に植え変えるのに対して、陸稲は種籾を畑に直播するので手間が省け、品種によっては縞葉枯病やイモチ病に強いなどの利点も。

連作できないのが難点で小平でも陸稲の作付は激減している。
花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月

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