モジズリ (らん科)



音信なし文字摺草は咲きぬれど  沢田沙鴎

ひょっこりと土の中から、2、3枚の細い葉が出て、その根元からスリムな草茎が伸び、その上の方に桃紅色の花が螺旋状に咲く。花のつき方がねじれているので、俗にネジバナの異名で呼ばれる。

地方により、ネジリバナ、ネジリンボウ、ヒネリバナなど種々な呼び名があると聞く。

多くの野草に混じって、7月頃このモジズリがその名のように体をねじり、草茎の下方から次々に花を咲かせている可憐な姿を見るとき、上水土手の野趣は未だ健在だと安堵する。

径5ミリ足らずの花はよく見るとカトレアに似て、その名は「信夫綟摺(しのぶもじずり)」に由来すると言われる。信夫綟摺というのは、陸奥国信夫郡(現在の福島市あたり)でかつて作られた、ねじれて絡まったような文様の染め物のことだそうだ。

最近は、上水土手でモジズリに気づかない人も多い反面、この花の咲く場所に似つかわしくない高速道路の土手などで、多数咲いているのを見かけることがある。

自然に恵まれた場所で育ったモジズリが芝の中に混じり込んで、運ばれてきたものであろうか。複雑な思いを感ずるひとこまだ。

花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月

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