クズ (まめ科)



山道に 石段ありて 葛の花  高浜 虚子

秋の七草の一つで、太い茎に茶色の毛が生え強い成長力を持ち、山野の随所で目につくこの野草は上水ではあまり見られなくなった。

その葉は強い成長力に支えられてか、夏項には回りの木々に巻き付いた茎から伸びて一面を覆いつくす。

生い茂った葉の下に陰に隠れるようにして、10センチ内外の紅紫色の房を上向きにつけている。円錐形の房にはマメ科特有の唇弁型の小花を下から上へ開花させ、淡い香りを漂わせる。

果も、フジのような莢状となる。クズ湯、クズモチの原料となっていたクズ根は、ちょうどサツマイモのような形で、古くは食料にもしたといわれ、多くのデンプンを含む太い根である。

茎は繊維質が多いことから古くより物を縛るに用い、フジの蔓と共に利用度は高く、クズは衣・食・住のすべてについて人間との係わりを持って、用いられていたといわれる。

また信州等では、ウマフジともいわれ家畜の良質な飼料とされ、冬支度の中の一つの仕事として、冬場の飼料に保存され使われている。

花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月

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