クリ (ぶな科)

鬱蒼と生い茂って来た梅雨どきの上水堤に、淡いベージュ系のモールが一面に降りかかっていた。

何だろう。近寄ると蒸せるような特有の匂いでクリの花穂だと分かった。

見上げると生成り色のモール状の花穂が沸きかえっていた。雄花穂ばかりが目立つが、その付け根付近に丸っこい小さい雌花が潜んでいた。雌花はクリのイガや食用とする堅果からは想像できないくらい繊細で目立たない。雄花が圧倒的に多く、雌花は一枝に数個の割合か。

秋になるとイガが沢山散らばり、足を取られそうになるくらい堤にはクリの木が多い。クリは北海道から本州、四国九州に分布する落葉の高木。冷温帯下部から暖温帯にかけて広く生育している。

上水堤には自生のヤマグリに加えて、奈良時代から食用として栽培暦の長い樹木なので、周辺の農家から繁殖した木も多いのではないかという。シーズンになると早朝に栗拾いをしている人の姿も。

食用だけでなくクリ材はタンニンを多く含んで湿った状態でも腐りにくいことから、水車小屋の水がかかる場所や土台の腐りやすい場所に使用されるなど、暮らしと関わりの深い樹木である。

花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月

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