ジュウニヒトエ (しそ科)


上水左岸の落ち葉にくるまれるようにしてジュウニヒトエが一輪咲いていた。濃紫色の園芸種系統は堤でも数ヶ所に生息しているが、本来のジュウニヒトエは珍しくなった。

全体に産毛に覆われて草丈は10〜15センチのこの野草は、茎の先端に花穂をつけ、淡紫色の小さな唇型の花をクリスマスツリーの飾りのように多数開いている。

階段状についた花穂の形が、平安時代の官女の十二単の衣装姿に見立られ、その名前になったといわれるが、花自体はそれほどあでやかではなく、むしろ素朴な野草である。

葉の縁には粗い鋸歯があり、細かい産毛もあり、平安絵巻を感じさせるようなロマンティックな趣ではなく、孤高に近い。

上水土手で木漏れ陽を受けて、このジュウニヒトエが咲いているのを発見したとき、思わず心の中で “あった!” と叫んでしまった。

陽炎を思わせる楚々とした姿とその名前が、上水の土手で幻とならないように願わずにはいられない。

花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月

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