ヒガンバナ (ひがんばな科)



曼珠沙華 あれば必ず 鞭うたれ 高浜 虚子

上水の林の枝葉が秋の気配を帯びはじめ、草ボケの実の色が黄色に変る項、斜面の柔らかそうな土の中からすくっと花茎がしなやかに伸びてくる。

伸び始めの茎はアスパラガスのようで、次第に瑞々しい緑色になり、その頂上にカプセル状のつぼみが膨らんでくる。

やがて6枚の花びらと6本の長い雄しべ、1本の雌しべからなる真赤な大輪の花の群れが、樹々のこぼれ陽を浴びて開花する。

暦通り秋の彼岸前後に、上水の底を流れる水面にひときわ鮮やかに影を落して咲いている。天上に咲き人の心を癒すという。

蔓珠沙華(梵語で赤い花)とも言われるこの花は、種子はできず地下の球根で繁殖する。何時の時期からか土手にも根を張って、すっかり玉川上水に咲く野草の一つになりきっており、秋を告げてくれる。

皇居の上手に咲く群落、多摩川ベリの日野市の一角、狭山の巾着田の群落など、その咲いている場所の風情により感じ方も異るように思う。

玉川上水の樹陰で真っ赤に燃えて咲くヒガンバナは、あでやかでいて清々しい。

花 期
春 3〜5月 夏 6〜8月 秋 9〜11月 冬 12〜2月

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