小平市玉川上水を守る会編



            『下村湖人』

青年リーダー講習所長として
下村湖人が起居していた『空
林荘』と記念碑




小金井公園正門から対岸に渡って少し南に下った一角にある浴恩
館公園。日中でも薄暗いような木立の中に建っている古い木造家
屋は、昭和3年に京都で行われた昭和天皇の即位式の際に更衣室
に使われた建物である。

当時の日本は昭和恐慌のあおりで巷に失業者があふれ、不況は深
刻で農村は疲弊していた。


農村を立て直すには青年の教育が重要だとし、青年団運動の指導
者であった田沢義輔(1885〜1944=元東京市助役)が、式典後の建
物を宮内省から貰い受け移築、浴恩館と名づけて、昭和6年から
日本青年館の分館として農村青年リーダー養成講習所に利用。

全国から選ばれた青年が1回に40〜50人が2ヶ月間、ここに寝起
きして講習を受けた。昭和8年に講習所長として赴任してきたの
下村虎六郎。作家の下村
湖人で、講習期間中は同じ敷地内にあ
る所長の宿舎・空林荘に泊まりこんで時局に左右されない教育を
目指した。

湖人は訓を垂れるのではなく、便所掃除も自ら実践して指導に当
たった。代表作『次郎物語』は空林荘で想を練ったとされ、
小金
井市の史跡に指定されている。昭和11年2・26事件を契機に軍部が
圧力をかけ予算がカットされ、講習所は翌13年に閉鎖。

現在、浴恩館は
小金井市文化財センターとして考古資料・古文書
・民具等の文化財を保存・展示している。

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