ソメイヨシノの大木と銅板に Singtong と打ち出した看板が、印象的な
古風な喫茶店。 油断すると見過してしまうほど、玉川上水周辺の景
色と同化している。
昭和37(1962)、西武国分寺線鷹の台駅から2分、玉川上水の流れに
ほど近いこの地に碇山邦夫、みどり夫妻によって開店した。シント
ンとは中国語で「新屯」と書き新しい村という意味、ちなみに碇山夫
妻は満州からの引揚者。すでにお二人は鬼籍に入っておられる。
当初、人情味に溢れる夫妻の魅力に引かれて近くの武蔵野美術大学
や津田塾大学の先生や学生、当時流行したジャズやクラシックのS
P盤を聴きに愛好家が集まったものだ。時は高度経済成長の真只中
にあった。
昭和40年玉川上水の通水はストップになり、たちまち緑道は荒れ側
壁の崩落が始まりだし、果ては上水道を潰して道路にしょう等とい
う計画案まで出る始末に住民の憂いは限界に達した。玉川上水を愛
し、次代にそのままの形で残したいという想いは結集し、「小平市
玉川上水を守る会」が結成された。その活動基地となったのがシント
ンだった。現在も、守る会のメンバーが集い、情報交換の場となっ
ている。
地域の小学生たちが班活動で玉川上水について研究に来たり、散策
の人がグリーンロードマップをもらいに来たりと気楽に訪れられる
のが他の喫茶店とは違うところだ。
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