小平市玉川上水を守る会編


            『武蔵野雑木林

国木田独歩の『武蔵野』の舞台と
なった境山野公園。通称“独歩の森”






人が住む以前の昔の武蔵野は、常緑広葉樹林に覆われていた。

関東地方の水田稲作地帯の沖積低地(荒川・利根川)には平地林
(雑木林)がなく、沖積大地(武蔵野・下総・相模原)の乏水地帯
の耕地や丘陵の畑作地帯には平地林がある。

農業を営む上で平地林を大切な生産手段としていかに維持管理
していくか、落ち葉での堆肥・厠肥、有機質の土壌作り、薪炭、
燃料、萌芽更新、経済林の一面も果たしているのである。

生活に密着した平地の森林は山林(ヤマ)と呼び、決して「雑木
林」とは云わない。土地台帳の地目名に山林はあっても 「平地
林」としての取り扱いはない。

雑木林の名称は、農村の風景的価値を見出し美化することを文
学作品の中で謳い、徳富蘆花は「落葉林」、国木田独歩は「雑
木林」と呼んでいる。

その影響により、落葉広葉樹 (クヌギ・コナラ・シラカシ・エ
ゴノキ)に親しみ、市民が「雑木林」を一般用語として 認知・
共感するようになったのは、明治中期以降のことである。

農民にとって農業林野(ヤマ)は、重要不可欠であるが故に大切
に維持管理してきたのである。

春=新緑、夏=緑陰、秋=黄・紅葉、冬=落葉…と四季折々の
変化に富む季節感を育む落葉広葉樹に『雑』は馴染みにくい。
また、平地林は農業の再生産材及び生活資材としてきたことを
今、再考すべきである。

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