セレモニーを終えた後は二荒山神社の客殿に場を移して、懇親会と記念
講演会が開かれました。今回の講師は元栃木県庁で長く自然環境行政に
携わって来られた飯野達央さんで、飯野さんは前日、10日間のイギリ
スを巡る旅から帰国したばかりで、徹夜で講演の準備をされ駆けつけて
来られたそうです。

しかし、飯野さんは「天空の湖と近代遺産」と題して、スクリーンに要
点と画像を映しながら、国際リゾート地・奥日光誕生の背景を歴史と自
然環境の両面からレクチャーを。中禅寺湖畔の外国人別荘など近代遺
産の貴重な存在を、深く知る機会を得ました。


夏でも湿気が少なく爽やかな中禅寺湖の気候は、スコットランドの気候に
似ていると言われます。ハンス・ハンターもスコットランドに似た景観と
気候に惹かれて、西六番別荘を設け、国際的なリゾート地を構想したと伝
えられています。

飯野さんによると、復元工事が始まるイギリス大使館別荘からの眺めは、
湖水地方のウィンダミア湖のある地点からの景観とそっくりで、アーネス
ト・サトウは、この地を選んで別荘を設けたのではないか…と。スクリー
ンに映し出された2点の画像は、驚くほど類似していました。

ウィンダミア湖は有名な観光地でありながら俗化せず、ナショナルトラス
トによって景観を保護されています。



中禅寺湖畔へ足を運ぶたびに日本有数の観光地でありながら、時流から立ち
遅れているのではと感じておりました。

アクセスもイマイチで、JR日光駅か東武日光駅からバスでいろは坂を約40
分もかかる上に、商店街にも廃屋が目立ちます。つい欲しくなる土産物や
銘菓も乏しい。気軽に泊まれたり、若い層が惹かれる宿泊施設もない。こ
のまま中禅寺湖は、寂れていくのだろうかと思ったことがありました。

その一方で、アウトレットなど大型商業施設がなく、原宿化しない中禅寺湖
畔だからこそ惹かれるものがありました。2000年にイタリア大使館と西六
番園地が公開され、湖畔沿いに遊歩道が整備されるにつれ、テクテク
族には魅力が増えました。

明治から大正期にかけてイギリスやイタリア、フランス等々の諸外国の外交
官などが釣りやヨットなどを楽しむ避暑地として賑わい、ヨーロッパのリゾ
ートが出現したようだった中禅寺湖畔。その雰囲気を取り戻すと同時に、戦
場ヶ原などの自然環境を守る栃木県の「国際観光地日光活性化事業」「緑の
ダイヤモンド事業」を担当して来られたのが、飯尾さんでした。

直接関わって来られただけに、飯尾さんの講演は詳しく、具体的で魅了され
ました。20008年から「ハンス・ハンターを偲ぶ会」が開かれ、小島さん
やレストラン「シェ・ホシノ」のマスター星野仁志さんら地元の方々と親し
くなるにつれ、親戚ができたように思いました。見えない糸に引かれたとい
うか、ハンス・ハンターに導かれたという気がしております



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