| 小平市内にかつて、『範多農園』と呼ばれる広大な農園があったことを知った |
| のは昭和62～63年のことだった。 |
小平市公園緑地課主査のＫさんから、「鈴木町２丁目にある日本植物防疫
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| 協会研究所の敷地は元 『範多農園 』と呼ばれ、その敷地内に大岡越前守 |
| の屋敷にあったといわれる土蔵がある」と聞かされた。 |
近隣には見かけない趣きの蔵で 保存状態もいいとのこと。Ｋさんによると小金 |
| 井カントリー倶楽部北側一帯は、戦前まで貿易商をしていた範多範三郎こと |
| ハンス・ハンターの農園だったそうで、その蔵もハンター氏が麻布の別邸から移 |
築したらしい。古くからの土地の人々からは“越前さんの蔵”とよばれていた。
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| ハンス・ハンターといい、大岡越前守屋敷の蔵といい初耳のことばかりで、にわ |
かに信じがたい話だったが、Ｋさんの顔は真剣だった。
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| ハンス・ハンターは名前からするとドイツ系の人と思われたが、Ｋさんによるとラト |
ヴィア人らしいとのこと。
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当時、ラトヴィアはまだソ連邦のバルト三国の一つで、はるか遠い北の国という |
| ぐらいのおぼろげな知識しか持ち合わせてなかった私は “ラトヴィアの貿易商” |
| だというハンス･ハンターと “越前さんの蔵” との間に、どんなドラマが潜んでい |
るのだろうかと、勝手な想像をふくらませた。
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在りし日の姿を求めて ①
